ずっと前から、秋の対馬で釣りをしてみたいと思っていた。対馬は何度も行っているのだが、仕事の関係で、秋の時期に行くことは難しかった。
秋といえば魚種、数共に多く狙え、全国的にも釣りのハイシーズンといえる。
ここ数年熱中しているヒラマサ釣りにおいて
日本屈指の釣りフィールドである対馬のポテンシャルを感じてみたい。
対馬釣行に際して、ヒラマサを狙うための釣り場を考えてみた。
これまで培った経験から導き出したヒラマサがいそうなポイントは以下となる。
・潮通しのよい岬を絡めたワンド。
・横風や波が回り込んでベイトが溜まりそうなところ。
・シャロー、かつ地形に変化があって、沖から魚が刺してきそうな溝も入っているところ。
特にキーとなるのはシャローと地形。ヒラマサは明らかにシャローでよくヒットする。
シャローでかつ地形が複雑であれば居ついていることも多く、そのような場所では釣り始めてすぐに反応のあることが多い。
11月某日に出発
1日目
対馬到着。初日は運転疲れのため、明日に備えて身体を休める。
2日目 北西風10~8m 波高2.5~2m
夜半から強い風が吹き、海は時化模様。波高は2m。西側に広がる長大な遠浅の海岸でヒラスズキを狙ってみる。広大なフィールドを足を使って移動しながらの釣りはすごく楽しい。いろいろな釣りをやってきたが、ヒラスズキのゴロタでのランガンが最も好きだ。限りはあるのだが、見渡せるはるか遠くまで歩いて釣りができ解放感と高揚感に包まれる。初日からサラシ抜群のヒラスズキにとっては好条件となるが、感覚をつかむまでに少し時間がかかる。風は10mほどと強く、横から吹き抜けるので、ルアーコントロールが難しい。そこで風でできる糸ふけを利用して、ルアーを流れに逆らわせずにできるだけ流れの中でルアーが自然に泳ぐよう操作する。波を横切ったり、風に糸が取られすぎて、ルアーにドラッグがかかりすぎると釣れないような気がする。なので、できるだけ風に正対して風の影響を少なくした方がルアーは自然に動かしやすい。そうやってスイッチヒッターを使用していると、ヒラマサとヒラスズキがヒットする。
ヒラマサは波打ち際まで追ってきて背びれを出してのヒット。ヒラスズキは、スイッチヒッターをフルキャストして前述のように操作してのヒット。ブレイクは遠い場所と近い場所が混在しており、距離は30m〜70mほど。波高があったせいか、ワンドの払い出しや流れの安定しているところに魚がいた。魚は掛かりどころが悪く弱ってしまったのでキープする。
潮が満ちてきたことと、釣った魚をクーラーに入れるために一旦、車に戻り、別のポイントに向かう。
午後から風は少し弱まって釣りがしやすくなる。
次のポイントに着いてすぐに、ミノーで、メッキが2匹ヒットする。メッキは初めて釣ったので意外だった。ヒラスズキはミノーではヒットせず、スピンテールに変えた途端に3ヒットし、80cm近い良型含めて2匹キャッチ。
対馬のシャローの海岸は、干潮時の方が釣りがしやすい。潮が満ちてくるとポイントが遠くなるところが多い。ただし、シャローの海岸であっても局所的には潮が満ちてくると通行困難になるところもあるので気を付けたい。ここでは帰りに1か所通行が厳しくなったが、有難いことに高巻きできるように足場とロープが設置されており事なきを得た。
3日目 北東風6m 波高2〜1.5m
有名ポイント?に向かう。ここは4駆の車なら海岸近くまで行けるが、道中は荒れており、落石、倒木のリスクがあるので、相応の準備が必要なので、私は遠くに車を停めて1時間ほど歩いた。
歩くと頭の中が整理できるし、時にはひらめきが起こったりするので苦にはならない。しかし、行きはよいのだが、帰りは気力が低下していて思考が働かないので、なにかで紛らわした方が時間の経過が早く感じる。この時はオーディブルを聞きながら歩くことで退屈しなかった。
釣り場では、北東の風がやや強いが、風の影響を受けにくいようキャストの方向を調節すればダイペンの操作は問題なし。着いてすぐにヒラマサのバイトが多数あり、早々に1匹キャッチした。あまりにもすぐに釣れたので、フックを魚のダメージの少ないシングルフックにチェンジする。
そうするとヒット率が少し下がったが、それでも1時間に2回のペースでヒットする。
釣った魚は食べる派であるが、遠征では食べる量が限られるので何匹も魚をキープすることは難しい。そこで、できるだけ魚にダメージを与えずにやさしいランディングと素早くリリースすることを心がけてはいるのだが、それでも魚に傷を多くつけてしまったりすることがあるので数匹釣った時点で早々に釣り場を後にした。
午後には波風共に落ちていき、海は段々と静かになっていく。あまり期待せずに夕方は小松崎近辺のゴロタで釣りをする。そこではヒラスズキを狙っていてヒラマサがヒットする。サイズは60cmほど。
ヒラスズキは2回ヒットするも食いが浅く2匹共バラシ。全てスピンテールにてヒット。スピンテールはサルベージブレードがエビになりにくく使いやすい。
この時点で充分な釣果を得られたので、心は満たされた。あとは、肩の力を抜いて気の向くままにやろう。
4日目 北東風8m 波高2m
今日は、ポイント選定が嚙み合わず、いざポイントに着いてみると潮位が高すぎたり、波や風が強すぎたりと、引き返すことが多く磯を歩きまわることになった。朝一は、島形状の磯に干潮後の上げ途中に入るが、水位が既に高く、これ以上潮が満ちてくると復路がずぶ濡れになるので、すぐに上がる。干潮に向かってエントリーし、干潮前後にやった方がよさそう。波高2mでは先端は波が高すぎて危険であり1.5mくらいがよさそうだ。場所を変えた北の岬の突端も波が高く、かつ潮が満ちてきているとやりにくかった。ここも干潮前後が釣りやすそうだ。最後に波は低いが西側の磯でやるとヒラスズキが3ヒット3バラシ、ヒラマサ2ヒット1キャッチ。スピンテールはヒラマサにもよく効く。ヒラスズキはショートバイトでバレやすいが、ヒラマサはガッチリフッキングしていた。ヒラスズキを狙ってのヒラマサのヒット率が異様に高い。サイズは小ぶりだがこれで3日連続ヒットしているので、かなりの数のヒラマサが海岸近くを回遊しているものと思われる。
5日目 北東の風7m 波高1.5m
干潮は7時半頃、その前後であれば、島形状の磯に渡れる。帰りに心配ないよう余裕を持って朝マズメから渡る。先行者がみえる。ヒラスズキ狙いのようだ。挨拶すると1匹掛かったが、バレたとのこと。こちらも反応はないので、食いがあまりよくないようだ。2時間ほど経ってもアタリすらない。さすがに魚があまり入っていないとみて、場所を移動する。西側は波がないことはわかっているので、東側でどこかやれるところはないかと考える。できれば近場がよい。ふと左に目をやると良さそうなさらしの立った地形がみえる。あそこに行けないものかとグーグルマップと等高線地形図に目を凝らす。地形図を見ると車道から海岸までなだらかな等高線となっているので、もしかしたら道があるかもと近くまで車を走らせると地図には載っていない林道を発見。荒廃していて車は通れそうにない。とはいえ、歩いても海岸まではたいした距離ではない。意を決して歩き出す。しばらく進むと林道は海岸の方向には向かっていないことに気付く。地形図をみると、右手の谷を下れば海岸に降りられそうだ。崖がありそうな地形ではないので、とりあえず行ってみることにする。倒木が多く、傾斜もそこそこ強いが、スパイクのピンが泥の地面をグリップし問題ない。ほどなくして海岸に到着する。変化に富んだ磯が姿を現す。ポイント豊富でやりがいがありそうだ。ここで反応がなかったら悔いはない。いれば勝負は早いはず。ところがあらゆるポイントで無反応だった。西側に比べて東側の状況はよくないのか。
6日目 波高1m、北東の風6m
有名ポイントに朝マズメに入るが、既に先行者2名。しかも周辺には渡船での釣り人が多くいて、場所を変えることも難しい。場所が狭いので気が引けるが先行者に挨拶をして奥まった端っこに入れてもらうことにした。先行者は若者で韓国人の釣り人に対してゴミ捨てのマナーが酷いと不満を漏らしていた。グローバル情報化が進んだ社会でしかもわずか数十キロ離れただけの国でマナーにそんなに違いがあるのか。会話を終えてから開始早々に灰色2号にバイトが数回あるが、乗らず。大人しいバイトからして、ヤズかもしれない。それから1時間半ほど反応がないため、湾内側に移動し小さなワンドを狙ってみる。すぐにヒラマサのチェイスがあるが、食いつかない。それからも30分間隔ほどでヒラマサのチェイスがあるが、食いつかない。水の透明度が高く魚がよく見える。足下の磯際から沖のルアーを見に来るヒラマサも数度か目にする。天気がよく気持ちがいいので、弁当を味わって食べたり、景色を眺めながら、のんびりやっていると10時半頃に水しぶきが立たない地味なバイトでヒラマサがヒット。着水後に水面をバシャバシャしたロングジャークにヒットした。何度もチェイスしてきた個体か?テールフックをアシストラインの長いフックにしていたので、ショートバイトを拾えたのかもしれない。太陽を背に、かつ透明度の高い海だからこそ、ルアーが着水してから、魚が近づいてくるのが丸見えなので、魚の動きや反応がわかり面白い。太陽を背にすると魚にとって眩しく?ルアーが見にくいので、太陽の上昇と共にルアーが見えにくくなりこれがヒットに影響したのかも。アプローチの長い林道の場合、磯靴は担いでいき、歩きやすいシューズを履いていくと楽だ。
その後もヒラマサは釣れたが、大型は出なかった。
やはり対馬の秋シーズンはヒラマサの魚影は濃かった。サイズを問わなければ、連日釣れる。しかも特定のポイントだけで釣れるのではなく、広範囲で釣れる。
ルアーロストもゼロだったのでいい釣りができた。
今回のラインシステムは、リーダーを太めにしたが糸抜けはよくトラブルは起こらなかった。
ラインシステム:リーダー アプロードソルトマックス150lb(4.5m)スクラム5号(60cm)メインライン よつあみロンフォートオッズポートPE5号 ロッド:ドラッガーブレイクスルー100HH
その他の釣り
風が弱く、波も穏やかな日は漁港でのんびりと釣りをした。良型のアオリイカ、豆アジは港内にたくさんいて日中、夜間問わず豆アジングを楽しめた。夕方になるとカマスも釣れた。カマスは太く旨かった。オオモンハタも2匹釣れ、地元にはいない魚なので嬉しかった。漁港も透明度は高く、魚の動きが手に取るようにわかる。ヒラマサ数匹がアジの群れにちょっかいを出したり、他にタイやイラ?等たくさんの魚が見えた。
今回は、街なかのお店巡りもしてみたのでオススメのお店を紹介します。比田勝にあるできたてのかすまきを提供してくれる山八製菓。味も見た目もよい厳原のmountainmountainのパン。
ふと感じたこと
水の透明度の高い方が釣りをしていて楽しいと思うが、水が濁っていることで釣りを楽しめることもあるのではないだろうか。例えば、魚影の薄い地域では、水の透明度が高いとそこに魚がいないことがわかってしまうので、釣りをする気がなくなる。そこで水が濁っていれば、もしかしたらそこに魚がいるかもと期待して釣りができる。はたから見ると魚のいない海に向かって釣りをしているのは滑稽ではあるのだが。一方で、水がきれいで魚がよく見えるところでは、魚が見えなければ、いないことになるのでやる気がおきないことにつながる。しかし、合理性だけではないのが釣りの魅力だ。なにもいない海にルアーを投げ続けられる。それは水の中がみえないからこそ成せることではないだろうか。そして、見えない海中の魚を想像しながら時には物思いにふけったり、考えを巡らすのも良いことだ。これは私が住んでいる近所の極端に魚影の薄い釣り場に当てはまることだと思う。
対馬に来ていつも思うことは、魚影の濃さはもちろんのこと、釣りのポイントが豊富にあり、人を気にせず釣りができること。さらに漁港においても釣り禁止のところは少なく、伸び伸びと釣りをすることができる。
私の育った地域には、家の周りには自由に遊べる自然環境がない。身近な海岸は護岸とテトラポットで埋め尽くされ、立ち入り禁止となり、港湾も釣り禁止となってきている。
ただでさえ、身近な陸地には、自然豊かで自由に遊べるような共有地がなくなってきているのに、その中でも手軽に生き物や自然と関われる環境が海岸での釣りであったのにそれも港湾や護岸で埋め尽くされて、釣り禁止も増えてきている。自然と触れ合える機会が失われてきている。
釣りは人間の根源的な欲求を満たし活力をくれる。釣りという気軽に生き物や自然と触れ合える場所が少なくなってくると人間はどうなるのか。人々は、満たされない欲求を他のなにかで埋めようとする。それは、どこに向かうのか。
歴史が進んでいる方向とは、全てのものを管理し、人工物で覆いつくし、規制やルールでがんじがらめにすることなのだろうか。私はそんな世の中には耐えられないので、自由を求めて、自然の中に向かう。長い歩きや険しさをいとわなければ、人の目が行き届かないような場所はまだまだある。そんな場所で釣りをしながら佇んでいると、心が落ち着き、幸福感に包まれ穏やかな気持ちになれる。
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