自分で作ったルアーで魚が釣れることを想像するとワクワクする。釣り人なら、一度はそう思ったことはあるのではないでしょうか。とはいっても、ルアーを作るには手先の器用さが求められそうだし、専用の道具もいるし作業スペースも必要でなかなか踏み出すことは難しいと思います。そこで、狭いスペースで安価に簡素なルアー作りをした私の経験を紹介したいと思います。ルアー作りに興味のある方の少しでも参考になれば幸いです。私のルアー作りは主にネットの情報を元にして完成まで進めることができました。ルアーの種類はダイビングペンシルになります。昔だとやり方がわからなくて行き詰って途方にくれていたことが、現代だと大概のことはネットで調べるとわかるので、つくづくいい時代になったと思います。
ルアー作りをとおして感じたこと
まず初めに、ルアー作りをとおして私が感じたことや気が付いたことをずらずらと書いていきます。作り方だけを知りたい方にとっては退屈かもしれません。
狭い賃貸住まいでもルアーは作れる
ルアー作りをはじめた時、私は10畳の賃貸住まいだったので作業スペースは狭く、できるかどうかもわからないルアー作りのために工具、材料をそろえるのはかなりの思い切りが必要でした。(今は古い家に住んでいます)だから初期費用を抑えるために道具はできるだけ安価なものを購入しました。しかし、せっかく道具と材料を揃えたものの、限られた休日を利用してのルアー作りは、なかなか取り掛かれず、それから半年ほど手つかずの日が続きました。ところが、あることをきっかけに取り掛かってみると、思ったよりも簡単に作れてしまい、さらに意外にも釣果もすぐについてきました。(あることととは、実家に立ち寄ったとき、ジグソーを貸してもらえて、その日は気持ちの良い快晴の冬の晴れ間だったことで、庭で小刀を使って木を削ることが気持ちよかったことでした)物事というのは、見たり聞いたりするのとやってみるのとでは印象は大きく異なることに気が付きます。始める前には予想もしなかった、やってみたからこそわかる新鮮な発見や気づきが多くありました。

考えすぎずにやってみる
始めから最後までやろうと意気込んで道具をすべてそろえるとなるとプレッシャーが大きいので、まずは木を削って成形するところまでだけでもやってみようという気持ちで始めてみました。それが楽しかったら、その先の工程に進むのでいいと思いました。そこまでなら費用は数千円で済むので、途中でやめてもそれほど損害は大きくありません。また、ハードルが高いと感じていた塗装について、私は塗装は苦手だし好きでもなく部屋が汚れたりするので未だにできていません。しかし塗装はしなくても最低限のコートだけでも魚は十分に釣れます。木肌だけののっぺらぼうのルアーでは、釣りのモチベーションが上がらない場合は、目玉シールとホログラムシール位は貼るといいと思います。私の場合、ルアー作りの面白さはルアーアクションを考えることだと思っているので塗装やカラーリングは重視していません。


やってみると意外に楽しい
いざ始めようと道具を揃えてみたものの面倒に感じて、半年は手つかずの状態が続いていましたが、先のきっかけから暇な冬の時期に木を削るだけでもやってみようかと思いました。すると意外に楽しかったのです。私の場合、木を削る作業が自分には合っていたのか、時間を忘れるほどに没頭してしまいました。(刃物研ぎも好きなのですが、これと似ていて木を削っていると集中でき精神が落ち着く感じがします。)こんなことは子供のとき以来のような気がしました。人間は生きていく上で複雑な仕事や神経を使う人間関係、社会への適応や情報過多による将来への不安や、なにをやればいいのかわからない混沌としたことに振り回されることもあると思いますが、木を削るような単純な作業は、思考の余地を残せるほどの単純な作業だからなのか、没頭できる心地よさがありました。
作ることに喜びを感じる
自分が行う能動的なアウトプットの活動は、根源的であるからなのか人間の精神にもよい作用があるのではないかと思います。人間は与えられる(もらう)よりも、生み出す(作る)ことの方が喜びを感じられるのかもしれません。さらにルアー作りは、自分自身がプレイヤーとして、釣り人だからこそ、実際に魚がルアーにヒットする瞬間を思い描けるから、それを想像しながら作ることで、より楽しく感じられるものだと思います。私の場合、オフシーズンでのルアー作りでしたが、作業中はルアーの動きをイメージしながら、頭の中にはロックショアの景色が広がっていました。

試行錯誤と失敗から学ぶ
形状を決めるために試行錯誤したことは別の記事で書いていきたいと思います。このような動きにするためには、この形状にするしかないというように最適解を目指して取り掛かる必要はないと思っています。(そもそも形状やバランスによるアクションの違いはまだまだわからないことだらけ)大切なことは、自分の想像力を掻き立てて、思い付きの仮説でもいいので、こんな形状にすれば、こんな動きになりそうかなとか、こんなルアーがあったら面白いなとか、または好きなルアーを真似るのでもなんでもいいと思います。個人で楽しむだけなので。最初はイチから考えるのは難しいので、持っている市販のルアーや、釣りを通して感じたことから直感で形状を決めていくといいと思います。私の場合は、これまでの実釣の経験に基づき、直感でルアーの形状やバランスを考えて作ってみました。営利目的となる仕事の場合、失敗が許されないプレッシャーがあり、思い付きで取り組むことはできませんが、趣味の世界なら失敗しても自分でなんとかすればいいので失敗を恐れずに、やりたいものです。思い付きや直感でやってみたことが思いもよらない発見につながることもあると思いますし、失敗から学べる点もたくさんあると思います。(素晴らしいルアー作りの先人が既にたくさんいます。いち個人が作る意義とは完成させることより作る過程の方が大事だと思っています。優秀な完成品は、お金を出せば簡単に手に入りますが、作る過程はお金で買うことができません。自分の体験は自分しか経験できず、初見のことをどう感じるかは自分でもわかりません。これを大切にしたいです。)試行錯誤して、ルアー作りを楽しむことが釣りそのものをさらに楽しくするものだと思います。
構想から形になるまで関われることの喜び
会社は効率と合理性を優先しがち。私は会社勤めの中では、最終製品がどこでなにに使われるのかもわからないような分業化の中で部分的な業務をしていました。上流の工程や下流の工程に興味があって自分のアイデアを意見したこともあったが、別部署であることと立場的にも下だったので、意見を聞いてもらえるようなことはありませんでした。(そもそも、私にはたいした実力もなく、人を動かす能力もなかったので愚痴にすぎません)そんな自由度のない業務に楽しさを感じることはほとんどなく、やらされ感しかなく、その内に黙って上の言う事に従っていた方が楽だという割り切った考えになり、仕事はお金を稼ぐ目的でしかなくなり、労働への興味はどれだけ楽に手っ取り早く終わらせるかだけになり、会社では自動機械のように心は抜け殻の状態になっていきました。(今、思えば仕事よりもプライベートを優先した人生の方が上下関係、力関係、利害関係等から解放され自由で人間らしい振る舞いだと思っています)そんな中ではじめたルアー作りは、使用する条件や場所、ターゲットを設定し、それに向けて理想とする動きを決めて、具体的なルアーの大きさ、重さ、形状を決め、それを作るための材料や工具の調達、作る方法、費用の計算、実釣テストまで全て自分で行えることに楽しさ、喜びを感じました。ルアー作りは少ないお金をかけての小さなものづくりですが、組織に所属して大きなプロジェクトの部分的な業務をこなすよりも、心の充実ははるかに大きいと感じました。

ルアー作りに必要な道具
必要な工具と材料は6000円ほどで全て揃います。(細かいものを含めるともう少し高くなるかも)最初は1つのルアーを作るのに8時間ほど掛かるかもしれません。ここで紹介する範囲は、実釣で使えるようコートするところまでとします。カラーリングは私自身やっていないので除外とします。また、フックはシングルフックまたはツインフックの使用を推奨します。(トレブルを使うとルアーにフック傷が付いて浸水しやすくなるため)近年釣ったヒラマサのほとんどが自作ルアーです。その自作ルアーの作り方を参考にしていただければと思います。
木材を削って形作り(作業時間3~4時間)
必要な工具と材料
・小刀
・木工用のこぎり(100均でOKですが、レザーソーがあると驚くほど楽に切れます。)
・ボールペンか鉛筆(100均でOK)
・桐集成材(厚み13mm)
・両面テープ(100均でOK)
・はさみ(100均でOK)
・厚めの紙
・カッティングマット(300円ほど)
・保護手袋(なくても大丈夫ですが、小刀による切り傷防止のために手袋を着けると安心です)
・紙やすり(#200、#400)
重りとワイヤーを入れる(2時間)
必要な工具と材料
・ステンレスワイヤー(太さ1.4mmまたは1.6mm)軟質、硬質どちらでも問題ありませんが、まずは曲げやすい軟質がいいと思います。
・エポキシ接着剤(100均でOK)
・ラジオペンチ(100均でOK)
・カッター(100均でOK)
・重り(丸オモリと板オモリ)釣り具店で買えます
・彫刻刀(丸刃 サイズは9mmと3mm)
コート~完成(1回に付き10分ほど×6回)
必要な工具と材料
・セルロースセメント(寒い時期)またはエポキシレジン(暑い時期
(セルロースセメントを使うときは屋外(ベランダ等)防毒マスクあるとよい)
次回は気分次第ですが木材を削ってルアーの形作りまで書く予定です。
これより下はこれまでルアー作りをしてきて気が付いたことを書きます。
私が考える「ルアーを自作する意義」について
現代は、機械による精度の高い加工ができ、優れた材料もあり、資本力のある会社は効率的かつ合理的なものづくりが可能になっている。ルアー作りに導入されているのかは知らないがシミュレーションや流体解析等の技術も進んでいる。お金を出せば優れたメーカー品を安価に入手できる。そんな中、わざわざ時間を掛けてルアーを自作する意味はあるのだろうかと思う。張り合うわけではないが、一個人が手作りするルアーがメーカー品と比べて優位な点があるはずもない。どう考えても自作ルアーは、メーカー品より劣った自己満足にしかならないと思っている。しかし、本当になにもかもメーカー品に劣るかと言えば、そうでもないような気がしてきた。自作を続けていく内に気が付いたことがある。
それは、自作において、メーカーには真似できないことができるということ。例えば、壊れやすいけど、動きが軽くレスポンスのよいものが作れることが挙げられる。具体的には、最低限の防水性をもたせるくらいの薄いコートにして、さらに中をくり抜いて軽量化する。当然、強度は低くボディをぶつけるとすぐにへこんだり、浸水しやすいが、貫通ワイヤーをいれることで、ルアーは壊れても魚はとれる。(例えるなら防御力ゼロだが運動性能抜群の自作ルアー VS 頑丈で安定した動きの市販ルアー)簡単に壊れても天然素材である木材で作ったルアーは自分で直すことが簡単にできる。少しへこんだり、コートが割れたら、ヤスリがけしてから再度コートしたり、部分的に壊れた個所を切削して埋木をしたりして補修ができる。市販品では壊れやすいルアーは問題となるのでまず販売は難しいと思う。(昔のシーバスルアーには割れやすいけどよく釣れるものがあったので必ずしもそうとは言えないかもしれない)
具体的にメーカー品と自作の比較について述べると、例えばA社の180mmダイペンは総重量87gに対してオモリの重さは18gである。これに対して私の自作ルアー190mmは総重量80gに対してオモリの重さは41gであり、オモリの割合が前者と比べて圧倒的に大きい。つまり、それだけ自作ルアーはボディ材料の密度(比重)が小さいのでウェイト配置の余地が大きく、軽い箇所と重い箇所にメリハリを付けることができ、軽快な動きや切れのある動きを作りやすい。また、強度に関して、木材は細胞壁が三次元的に組み合わされた材料なので単位重量あたりの強度が高い。(プラスティック製はボディ補強のためにリブを入れたり部分的に厚みを増しているが、これもアクションとバランスが取れるよう計算の上、成り立っていると思われるから、ボディ密度が軽ければいいかといえば、単純にそうとも言い切れない。密度の高い材料であっても設計次第で優れたアクションを成立できるのかもしれない。とはいえ、一個人がそれをするのは難しいので、自作する上で軽快な動きにするためにはボディを軽くするのが単純で簡単な方法だと思う。)
改造が簡単なことも自作ルアーの良さと言える。例えば、後からボディに穴を開けてオモリを追加したり、減らしたり、ボディを削って形状をスリムにしたりといったことができる。これを市販品のプラスティック製でやると、ボディを削れば浸水したりして動きが大きく変わってしまうので難しい。
また、市販品では難しいこととして、ミスダイブしやすく、クセが強く、万人受けしない扱いにくいルアー。自作であれば、水面下を浅く泳ぐものとか、水面を飛び出しながらスラロームするものとか、ミスダイブはしやすいけど操作して楽しいものを作れる。
また、自作だと左右非対称になったり、天然素材である木材ならではのバラツキがあり、よくも悪くも動きが安定していないが、かえってそれがランダムな動きにつながり、良い結果を招くこともあると思う。
操作して面白くないけどよく釣れるルアーと操作して楽しいルアーでは、どちらが釣りをして楽しいだろうか。ヒラマサを釣るには、どこで釣りをするかの場所(ポイント)が1番重要であり、そこではどんなルアーでも釣れる可能性はある。同じポイントに別のルアーを同時に投げて検証した訳ではないのだが、少なくとも、ルアーの種類よりも良いポイントを選ぶことの方がはるかに重要であることは間違いない。あとは、集中力を持続できて投げ続けられることであり、そのためには飽きにくく操作して楽しいことが大事な要素。だからこそ、ルアーというのは使って楽しいことが大切な要素。人それぞれ感性は異なるので、個々に好きなルアーは違うはず。そこで自分の好きなルアーを自分で作ることに意義がある。自作の意義とは自分が好きな動きのルアーを自分で作ることだと考える。
(入手困難なので、市販品といっていいのかわからないが、あるメーカーは、密度の小さい木材をボディ材料として、さらに中をくり抜いてボディ密度を低下させており、壊れやすいようだが、切れのある動きでよく釣れるとのことである。そうなると自作の意義とは、思いつく限りで挙げてみると「作る過程そのものを楽しむこと、自分の好きな動きを追及すること、試行錯誤(釣り場でウェイトを貼ったり浮力材を貼ったり)して動きの変化を楽しむこと、よく行く釣り場に特化した仕様にする、扱いにくいものを操る楽しさ、安価にウッドルアーを所持できる」これらが考えられる。)
ここより下は、私がルアー作りの中で感じたこと気が付いたことを自由に書いていきます。なにかの気づきのきっかけになれば幸いです。書いていることのほとんどが私の主観なので、合っていることもあれば、間違っていることもあると思います。
ウッドルアーはレスポンスがいい?
2つのボールを比べてみる。1つは中心が重く周縁は軽いボール、もう1つは中心が軽く、周縁が重いボール。この2つのボールはどちらが転がしやすいか考えるとGD^2(慣性モーメント)の関係から、周縁が重いと慣性が大きくなり、転がりにくく、停めにくい。これに対して、周縁が軽いと慣性は小さくなるので、転がりやすく停めやすい。これをルアーに当てはめてみると、周縁の軽いルアー(ウッド製)は、高レスポンスで慣性は小さい。周縁の重いルアー(プラスティック製)は、低レスポンスで慣性が大きい。慣性がある方が、ダートしやすいように感じる。しかし、実際の動きを比較してみると必ずしもこれが当てはまるわけでもなさそう。私のルアー作りは思い付きを試しての繰り返しなので、理論的な方法とはほど遠い。ルアーの形状やウェイト位置によるアクションの違いについての書籍があればいいなと思う。
木材の種類はどれがいい?
比重の小さいものを求めるなら、バルサになるが、強度を上げるためにコートを厚くする必要があり、そうすると外縁が重くなりウッドの利点が損なわれてしまう。
バルサの次に軽い木材は桐になる。バルサと桐の両方を試した結果、バルサは柔らかすぎてルアー作りの加工中に少し力を入れ過ぎて押し付けただけで凹むので扱いにかったので、私は桐の方を好んで使用している。桐はホームセンターに置いてあるが、私の知る限りそのほとんどが集成材だ。幅方向の長さを出すために接着した集成材なので、この接着部分をルアー作りに使わないよう避けることで、無垢材と同じような使い方ができる。他に杉や檜も安価に手に入る木材だが、桐と比べると比重は大きくなる。
型取り(木取り)の留意点
ルアーの型取りはルアーのヘッドとヘッドが向かい合わせになるよう切り出すことで左右の重さのバランスがよくなる。ルアーのL方向(長さ)と繊維を平行にすることで曲げ強度と切削性がよくなる。ただ、そうすると側面からの圧縮強度は低くなるが、これはコートで対策したい。下図は厚み13mmの桐集成材で板の幅方向に接着面の筋があるが、ここは避けるようにする。(集成材とは幅の狭い板や角材を幅方向に接着したもので、幅の小さい木材を幅広にしている)また下図の左上の繊維が斜めに走っており、ここでは繊維の向きとルアーのL方向が平行になるよう少し斜めに型取りする。あとは樹脂の溜まりのようなものも避ける。板を購入する際は、できるだけ繊維の方向がまっすぐなものを選ぶ。ちなみに繊維(木目)の間隔が狭いものほど比重が大きい傾向がある。

切り出しには、大変よく切れるレザーソーがおすすめです。
下記の本は木材について詳しく記されている。少し難しい内容も入っていて専門的だが、内容は深いので木工DIY等が好きな方にとって、ホームセンターの材料選びにも役に立つと思う。
半割式でできること
下の画像は、昨年一番釣果がよかったルアーの半割の貼り合わせ前の状態。小さなオモリは微調整で入れた。ワイヤーはできるだけ腹面に入れ、低重心化を図った。半割式はオモリやワイヤーの配置に自由度が高い。このルアーの動きはクイックレスポンスでレンジは浅く、ロングジャークすると背面を出して水飛沫を上げながらのワイドスラローム。魚から見て水面近くを動くルアーは、シルエットが把握しにくいのか、渋い状況でも釣れ、また小型(50cm~60cm)もよく釣れた。小型が釣れる理由はもしかしたら、魚がルアーの後ろから追尾した場合、魚からはルアーのテールしか見えず、ルアーの側面サイズが目視できないからかもしれない。半割式の他には貫通式があるが、ワイヤーを通すためのルアーのL方向への穴あけと、ラインアイ、テールフックアイの加工が難しいのでやっていない。

ヘッドを動きやすくするには
後方重心であるダイビングペンシルの場合、ヘッド側を軽くすることで水の抵抗を受けたときに側面を向きやすくなるように思う。ウォブルやスラロームアクションはルアーが横を向くことが起点となる往復動作なので、横を向きやすくすることがキビキビとしたアクションにつながる。そのためには、軽い木材を使うのはもちろんのこと、ヘッド側のコートを薄くしたり、またボディを中空にすることも効果的に思う。そうすると強度は低下するが、魚がかかったときに曲げによる力でルアーが破壊される可能性の高い個所は、テールフックとフロントフックの間が多く、木材が曲げられたとき外縁ほど応力が大きくなるので、ボディを軽くするために中をくり抜き中空にするのは、曲げに対する強度にはそれほど問題にはならない。しかし、魚の歯やフック傷によって浸水しやすくなることは考慮したい。軽くする方法として他には、ボディの外縁と内側を比重の違う木材で構成することが考えられる。例えば、外縁は比重の高い硬めで強度のある材を使い、内側には比重の低いバルサ等にする等。私は中空にするためにボディをくり抜く方法として彫刻刀で掘っているが手間がかかる。しかも手間がかかる割には、それほどルアーの動きへの効果を実感できていない。くり抜きはルーターやフライス盤があれば楽だと思うが、それは過剰だと思う。軽ければいいと軽さ一辺倒の考えは面白みがないようにも感じる。そういう意味では独創的なルアーをリリースしているグッドベイトは興味深く、私も既存の枠組みから少しでも離れたルアーを作ってみたいと思っている。

接着剤はエポキシがいい
木材用の接着剤には、よく知られる乳白色の木工用ボンド(ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤)があるが、これは耐水性がないので、ルアーには不適。木工用ボンドは安価で使いやすいので何度か試したが、ルアーはコートされていても使用中は徐々に吸水してくるもので、それにより木工用ボンドが白くなって浮き出てきたことがある。ルアーはコートされているのでルアーがバラバラになることはないのだが、強度や耐久性が低下するように感じる。対してエポキシ接着剤は100均でも手に入る2液タイプを使っているが、耐水性、耐久性共に優れており、今のところ問題を感じていない。ただ、2液を計量することや、低温では気泡が抜けにくく、粘度が高くなって扱いにくいところがある。ちなみに上記の木工用接着剤は熱可塑性であり熱によって再び軟化する性質を持っており、エポキシ接着剤の方は熱硬化性であり、いったん硬貨すると、もはや軟化することはない。
動きの微調整には板オモリを使用
できあがったルアーを実際のフィールドで使ってみてわかることがある。よくあるのは浮力がありすぎて、ミスダイブが多いケース。こんなときは強力粘着テープが付いた板オモリをルアーに貼ることで大抵は改善できる。板オモリはダイソーにあるものを使っているが、店頭に見当たらないこともあるのでそんなときは、釣り具店で購入している。基本的に自作ルアーは軽めに作っているのでフィールドで動きを見てオモリを追加して完成とすることがほとんど。重めに作らないのはルアーの内部から重りを取り出すのが手間がかかるから。自作ルアーの調整を簡単に書くと、ミスダイブが多いときは、テールに重りを追加したり、ラインアイから腹面にかけてボディ側面を削ってスリムにしたり、頭の周縁を削って小顔にしたりする。だが、いくら調整してもよくならないことがある。そんなときは、そもそもルアーの左右のバランスが崩れているのかもしれない。
ダイブ性をよくするには
ミスダイブには主に2つのパターンがあると思っている。1つは頭がつんのめって前転するパターン、頭が下へ潜りきれずに強い抵抗がかかることで転がる。急ブレーキをかけたときに後ろの荷重が抜けて浮いてしまうのと似ている。これへの対策は、テール側にウェイトを追加したりフックを重くしたりしてテールの浮き上がりを防止する、または、頭の形状を水を受け流しやすいよう側面を削ったりする。

もう1つのパターンはジャークの糸ふけが足りなかったり、足場が高かったりしてラインを上気味に引いてしまいルアーがダイブできずに前進する。このとき、ラインがさらに高すぎる状態で強いジャークをするとルアーが飛び出すことになる。これへの対策は上記と共通するが、他にもカウンターウェイトを重くする、またはフロントアイに板オモリを貼る。

軽いフックの方が動きは軽快になる
フックはルアーを安定させる効果があり、荒れた海面のときにはフックを重く、かつトレブル等の抵抗の大きなものにすることでルアーを安定させることができる。変わって穏やかな海面のときは、フックを軽くした方が、ルアーのレスポンス、動きがよくなる。しかしルアーには適合するフック重さがあるので、フックを軽くしすぎると操作性が悪くなる。そこでフックを軽くしたときは、軽くした分、板オモリ等でルアーに貼るといい。そうすることでルアーの操作性は損なわずに動きをよくすることができる。もう少し詳しくいうと、ルアー重量に対してフック重量の割合が小さいほどルアーの動きが際立つ。(例えば、あるルアーの適合フック重量6gのところ、4gのフックにした場合、差し引き2g分をルアーボディに追加する。)動きが軽快になるこれを自作ルアーに置き換えてみると、あえて軽いシングルフックでバランスがよくなるルアーウェイトにすることで、凪の日専用のルアーにできたりする。逆にかなり重いフックでバランスするよう作れば、荒れた海面で使いやすいルアーになったりする。(ルアーはフックがない方が自然な動きを演出できる。フックが重いほど、また抵抗が大きいほどアクションが自然でなくなるように感じている。だから軽いシングルフックでバランスを取ったルアーはナチュラルな動きにできる。しかし、ルアーにはフックというオモリがルアーの腹面にあることでルアーの回転を防ぎ、安定させる効果があるので、事は単純ではない。)
オモリの位置
基本的にルアーのフックは腹面側に付けるので、オモリも腹面側に付ける方がルアーの姿勢が安定する。仮にオモリを背面側に付けるとルアーはバランスを崩しやすくなり、極端な場合は、ルアーが回転する。とはいえルアーの高さ(体高)やオモリの分散による影響も関係するので、すべてにこれが当てはまるともいえない。ただ、ルアーのアクションをエッジの利いたものにするなら、オモリは集中させた方がよく、腹面側に付くフックもオモリとなるので、ここにオモリを近づけて配置した方がよい。例えば、後方重心なら、後方のリアフックにオモリを近づけて配置し、センター重心なら、フロントフックにオモリを近づけた方がいいと考える。ルアーを動かすのはジャークの力であり、その力がルアーの回転動作に使われてしまうと、他のアクション、例えばウォブルやスラロームが発生しにくくなる。ジャークの力をルアーのどこに配分して、どのようなアクションを出すのかがルアー作りの面白さだと思う。オモリの位置とボディ形状どちらもアクションに影響するが、ボディ形状の方が特に真剣に考えた方がいいと思う。私の経験上、形状がダメなルアーは、オモリで問題を修正しようとしても解消できないことが多い。*上にも記しましたが、ここで書いていることのほとんどが私の主観なので、間違っていることもあると思います。
ラインアイの位置
市販のダイペンのほとんどが、ルアーの高さのおおよそ1/2の位置にラインアイがある。ラインアイの位置について2つの意見がある。ラインアイは上(背面に近づける)にするほどアクションはタイトになり、深く潜る。一方では、軽いS字軌道を描くようになる。反対に下(腹面に近づける)にするほどアクションはワイドになり、浅く潜る。一方では、狭く大人しい動きになる。実際に試してみたところ、潜りの深浅については、上記の通りだったが、アクションについてはこの通りとは思えず私が感じたのはラインアイを上にして深く潜らせるとジャークの力を潜りである縦方向に割かれる分、横方向のアクションが小さくなること。したがって、潜りは浅い方が横方向のアクション(スラローム等)に使われる力の配分が大きくなると思っている。また他には、ルアー背面から見て、縦アイは動きが安定し、横アイはイレギュラーな動きがでやすいとも言われているので、今後試して確認したい。
コートの浮力への影響
コートを厚くするほどルアー重量が増えるが、それに伴い体積も大きくなるので、コートの重量増加による浮力(正しくは密度)への影響は小さい。ただし、エポキシの比重は1.1~1.2で水の比重より少し重いので、この分はルアー密度が増加することになる。
水受面を大きくするか、小さくするか
ルアーを引いたときに受ける水の抵抗を大きくした方が激しい動きになる。一方、水の抵抗を小さくすると大人しい動きになる。水の抵抗を大きくするには、ラインアイからボディにかけての角度を大きくする。特にラインアイからボディへの水平方向への角度が大きいほど、横の動きが大振りになる。縦(体高)と横(厚み)の比で、横が小さすぎるとロール優位の小振りな動きになり、横が大きいとスラローム優位の大振りな動きになる。ちなみに私の好みの縦と横の比は、1:0.8くらいで、ラインアイからボディへの角度は50~60度ほどにしている。
カウンターウェイトはあった方がいいのか
ダイペンは基本的に後方重心だが、一部のオモリをカウンターウェイト(以下CW)としてフロントフック近くに入れることがある。前述のようにオモリを集中させた方がアクションに切れが出るなら、CWは入れずに後方にウェイトを集中させた方がいいのだが、実体験ではCWを入れた方が、ロールが抑えられて前方へのアクションに伸びが出て、かつ横(水平方向)への動きも大きくなるように感じている。つまり、リアだけにオモリが集中しているよりも、フロントとリアにオモリを分割している方が、直進の際の姿勢が安定するように思うからである。
ワイヤーは軟質と硬質どちらがいいのか
貼り合わせ前のバランス調整のやり方
飛距離を出すには
オモリをできるだけ後方に集中配置し、かつ後方の比重を低くするため、ボディ素材をできるだけ削る。
フック交換しても動きはあまり変わらない
動きがいまいちのルアーを、フックを大きくしたり、小さくしたり、軽くしたり、重くしたりしてあれやこれやと試行錯誤しても改善できないことがほとんどだった。原因はそもそものボディ形状がよくない可能性が高いと思っている。水受け面(ラインアイ側から見たヘッド正面)の形状がルアーアクションに大きく影響する。これがわかってからは、ルアーを作るときに、まずヘッドの背面側の形状と腹面側の形状を考えるようになった。
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