自分で作ったルアーで魚が釣れることを想像するとワクワクする。釣り人なら、一度はそう思ったことはあるのではないでしょうか。とはいっても、ルアーを作るには手先の器用さが求められそうだし、専用の道具もいるし作業スペースも必要でなかなか踏み出すことは難しいこともあると思います。そこで、狭いスペースで安価に簡素なルアー作りをした私の経験を紹介したいと思います。ルアー作りに興味のある方の少しでも参考になれば幸いです。私のルアー作りは主にネットの情報を元にして完成まで進めることができました。ルアーの種類はダイビングペンシルになります。昔だとやり方がわからなくて行き詰っていたことが、現代だと大概のことはネットで調べるとわかるので、いい時代になったと思います。
ルアー作りをとおして感じたこと
まず初めに、ルアー作りをとおして私が感じたことや気が付いたことをずらずらと書いていきます。作り方だけを知りたい方にとっては退屈かもしれません。
狭い賃貸住まいでもルアーは作れる
ルアー作りをはじめた時、私は10畳の賃貸住まいだったので作業スペースは狭く、できるかどうかもわからないルアー作りのために工具、材料をそろえるのはかなりの思い切りが必要でした。(今は古い家に住んでいます)だから初期費用を抑えるために道具はできるだけ安価なものを購入しました。しかし、せっかく道具と材料を揃えたものの、限られた休日を利用してのルアー作りは、なかなか取り掛かれず、それから半年ほど手つかずの日が続きました。ところが、あることをきっかけに取り掛かってみると、思ったよりも簡単に作れてしまい、さらに意外にも釣果もすぐについてきました。(あることととは、実家に立ち寄ったとき、ジグソーを貸してもらえて、その日は気持ちの良い快晴の冬の晴れ間だったことで、庭で小刀を使って木を削ることが気持ちよかったことでした)物事というのは、見たり聞いたりするのとやってみるのとでは印象は大きく異なることに気が付きます。始める前には予想もしなかった、やってみたからこそわかる新鮮な発見や気づきが多くありました。

考えすぎずにやってみる
始めから最後までやろうと意気込んで道具をすべてそろえるとなるとプレッシャーが大きいので、まずは木を削って成形するところまでだけでもやってみようという気持ちで始めてみました。それが楽しかったら、その先の工程に進むのでいいと思いました。そこまでなら費用は数千円で済むので、途中でやめてもそれほど損害は大きくありません。また、ハードルが高いと感じていたカラーリングについて、私は色塗りは苦手だし好きでもなく部屋が汚れたりするので未だにできていません。しかし色鮮やかなカラーリングを施さなくても、魚は十分に釣れます。木肌だけののっぺらぼうのルアーでは、釣りのモチベーションが上がらない場合は、目玉シールとホログラムシール位は貼るといいと思います。私の場合、ルアー作りの面白さはアクションを考えることだと思っているのでカラーリングは重視していません。


やってみると意外に楽しい
いざ始めようと道具を揃えてみたものの面倒に感じて、半年は手つかずの状態が続いていましたが、先のきっかけから暇な冬の時期に木を削るだけでもやってみようかと思いました。すると意外に楽しかったのです。私の場合、木を削る作業が自分には合っていたのか、時間を忘れるほどに没頭してしまいました。(刃物研ぎも好きなのですが、これと似ていて木を削っていると集中でき精神が落ち着く感じがします。)こんなことは子供のとき以来のような気がしました。人間は生きていく上で複雑な仕事や神経を使う人間関係、社会への適応や情報過多による将来への不安や、なにをやればいいのかわからない混沌としたことに振り回されることもあると思いますが、木を削るような単純な作業は、思考の余地を残せるほどの単純な作業だからなのか、没頭できる心地よさがありました。
作ることに喜びを感じる
自分が行う能動的なアウトプットの活動は、根源的であるからなのか人間の精神にもよい作用があるのではないかと思います。人間は与えられる(もらう)よりも、生み出す(作る)ことの方が喜びを感じられるのかもしれません。さらにルアー作りは、自分自身がプレイヤーとして、釣り人だからこそ、実際に魚がルアーにヒットする瞬間を思い描けるから、それを想像しながら作ることで、より楽しく感じられるものだと思います。私の場合、オフシーズンでのルアー作りでしたが、作業中はルアーの動きをイメージしながら、頭の中にはロックショアの景色が広がっていました。

試行錯誤と失敗から学ぶ
形状を決めるために試行錯誤したことは下の方に分けて書いていきたいと思います。このような動きにするためには、この形状にするしかないというように最適解を目指して取り掛かる必要はないと思っています。(そもそも形状やバランスがどのようにアクションに影響するのかはわからないことだらけです)大切なことは、自分の想像力を掻き立てて、思い付きの仮説でもいいので、こんな形状にすれば、こんな動きになりそうかなとか、こんなルアーがあったら面白いなとか、または好きなルアーを真似るのでもなんでもいいと思います。個人で楽しむだけですから。最初はイチから考えるのは難しいので、持っている市販のルアーや、釣りを通して感じたことから直感で形状を決めていくといいと思います。私の場合は、これまでの実釣の経験に基づき、直感でルアーの形状やバランスを考えて作ってみました。営利目的である仕事の場合、失敗が許されないプレッシャーがあり、思い付きで取り組むことはできませんが、趣味の世界なら失敗しても自分でなんとかすればいいので失敗を恐れずに、大胆にやりたいものです。思い付きや直感でやってみたことが思いもよらない発見につながることもあると思いますし、失敗から学べる点もたくさんあると思います。(お手本となる素晴らしいルアーが既にたくさんあります。いち個人が作る意義とは完成させることより作る過程の方が大事だと思っています。優秀な完成品は、お金を出せば簡単に手に入りますが、作る過程はお金で買うことができません。自分の体験は自分しか経験できず、初見のことをどう感じるかは自分でもわかりません。この体験を大切にしたいです。)試行錯誤して、ルアー作りを楽しむことが釣りそのものをさらに楽しくするものだと思います。
構想から形になるまで関われることの喜び
会社は効率と合理性を優先しがち。私は会社勤めの中では、最終製品がどこでなにに使われるのかもわからないような分業化の中で部分的な業務をしていました。上流の工程や下流の工程に興味があって自分のアイデアを意見したこともありましたが、別部署であることと立場的にも下だったので、意見を聞いてもらえるようなことはありませんでした。(そもそも、私にはたいした実績もなく、人を動かす能力もなかったので愚痴にしかすぎません)そんな自由度のない業務には楽しさを感じず、やらされ感しかなく、その内に黙って上の言う事に従っていた方が楽だという割り切った考えになり、仕事はお金を稼ぐ手段でしかなくなり、(仕事というより、受動的な作業といった方が適切かもしれません)仕事への興味はどれだけ楽に手っ取り早く終わらせるかだけになり、会社では自動機械のように心は抜け殻の状態になっていきました。(今、思えば仕事よりもプライベートを優先した人生の方が上下、力、損得、利害関係等から解放され自由で人間らしい振る舞いができると思っています。こうやって書いているとつくづく自分は仕事が嫌いなんだなと思います。特に権威、集団行動、お役所的な組織)そんな中ではじめたルアー作りは、使用する条件や場所、ターゲットを設定し、それに向けて理想とする動きを決めて、具体的なルアーの大きさ、重さ、形状を決め、それを作るための材料や工具の調達、作る方法、費用の計算、実釣テストまで全て自分で行えることに楽しさ、喜びを感じました。個人でのルアー作りは少ないお金をかけてのちっぽけなものづくりですが、組織に所属して大きなプロジェクトで部分的な業務をこなすよりも、心の充実ははるかに大きいと感じました。

釣りがさらに面白くなった
できたての自作ルアーは完成度が低いので、フィールドで使用しながら調整を繰り返して完成度を高めていくことがほとんどです。最初はいまいちだったルアーが調整を重ねていくことでだんだんと使いやすく、かつ動きもよくなっていく、その過程がすごく楽しい。それも手を加えたことの結果の確認がわかりやすく表出するので、理論的にはわからなくても、気になることを実践してみることで、結果の確認がしやすい。フィールドではルアーの調整に夢中になり時間があっという間に過ぎてしまうこともしばしばです。しかも、ルアー調整中に魚のバイトがあったり、ヒットすることもあるので、最近は、ルアーを調整しながら釣りをすることがほとんどになりました。釣れないときに漠然と投げ続けるのは、ときに退屈になりますが、ルアー調整していると1投1投に課題があるので釣りの深みも増します。特にルアー調整しながらの釣りは、ヒット率の低いショアからの釣りと相性がよいと思います。(勘違いのないように付け加えておくと、魚の反応を見ながらのルアー調整なら魚の多い方がいいと思いますが、私のルアー調整は人間から見て動きがよく、操作して楽しいルアーを目指しているので、魚がいなくても成り立ちます。)よく考えて進めることも大切なことですが、場当たり的に思いついたことを次々に試してみた方が、いい結果にたどり着けるように思います。計画を練りすぎて、その計画に縛られるのは本末転倒なことです。
ルアー作りに必要な道具
必要な工具と材料は6000円ほどで全て揃います。(細かいものを含めるともう少し高くなるかも)最初は1つのルアーを作るのに8時間ほど掛かりました。ここで紹介するルアー作りの範囲は、実釣で使えるようコートするところまでとします。カラーリングは私自身やっていないので書けません。また、フックはシングルフックまたはツインフックの使用を推奨します。(トレブルを使うとルアーにフック傷が付いて浸水しやすくなるため)近年釣ったヒラマサのほとんどが自作ルアーです。その自作ルアーの作り方を参考にしていただければと思います。
木材を削って形作り(作業時間3~4時間)
必要な工具と材料
・小刀
・木工用のこぎり(100均でOKですが、レザーソーがあると驚くほど楽に切れます。)
・ボールペンか鉛筆(100均でOK)
・桐集成材(厚み13mm)
・両面テープ(100均でOK)
・はさみ(100均でOK)
・厚めの紙
・カッティングマット(300円ほど)
・保護手袋(なくても大丈夫ですが、小刀による切り傷防止のために手袋を着けると安心です)
・紙やすり(#200、#400)
重りとワイヤーを入れる(2時間)
必要な工具と材料
・ステンレスワイヤー(太さ1.4mmまたは1.6mm)軟質、硬質どちらでも問題ありませんが、まずは曲げやすい軟質がいいと思います。
・エポキシ接着剤(100均でOK)
・ラジオペンチ(100均でOK)
・カッター(100均でOK)
・重り(丸オモリと板オモリ)釣り具店で買えます
・彫刻刀(丸刃 サイズは9mmと3mm)
コート~完成(1回に付き10分ほど×6回)
必要な工具と材料
・セルロースセメント(寒い時期)またはエポキシレジン(暑い時期
(セルロースセメントを使うときは屋外(ベランダ等)防毒マスクあるとよい)
次回は気分次第ですが木材を削ってルアーの形作りまで書いてみたいと思います。
ここから先はこれまでルアー作りをしてきて気が付いたことを書いていきます。
私が考える「ルアーを自作する意義」とは
現代は、機械による精度の高い加工ができ、優れた材料もあり、資本力のある会社は効率的かつ合理的なものづくりが可能になっている。シミュレーションや流体解析等も技術的には可能になってきている。質が高く機能にも優れたルアーが安価に入手できる。そんな中、わざわざ時間を掛けてルアーを自作する意味はあるのだろうか。比較するのもおこがましいが、一個人が手作りするルアーがメーカー品と比べて優位な点があるはずもない。どう考えても自作ルアーは、メーカー品より劣った自己満足にしかならないと思っている。しかし、本当になにもかもメーカー品に劣るかと言えば、そうでもないような気がしてきた。自作を続けていく内に気が付いたことがある。
それは、自作において、メーカーには真似できないことができるということ。例えば、壊れやすいけど、動きが軽くレスポンスのよいものが作れることが挙げられる。具体的には、最低限の防水性をもたせるくらいの薄いコートにして、さらに中をくり抜いて軽量化する。当然、強度は低くボディをぶつけるとすぐにへこんだり、浸水しやすいが、貫通ワイヤーをいれることで、ルアーは壊れても魚はとれる。(例えるなら防御力ゼロだが運動性能抜群の自作ルアー VS 頑丈で安定した動きの市販ルアー)簡単に壊れても天然素材である木材で作ったルアーは自分で直すことが簡単にできる。少しへこんだり、コートが割れたら、ヤスリがけしてから再度コートしたり、部分的に壊れた個所を切削して埋木をしたりして補修ができる。市販品では壊れやすいルアーは問題となるので販売すること自体が難しいと思う。(昔のシーバスルアーには壊れやすいけどよく釣れるものがあったので必ずしもそうとは言えないかもしれない)
具体的にメーカー品と自作の比較について述べると、例えばA社の180mmダイペンは総重量87gに対してオモリの重さは18gである。これに対して私の自作ルアー190mmは総重量80gに対してオモリの重さは41gであり、オモリの割合がメーカー品と比べて圧倒的に大きい。つまり、それだけ自作ルアーはボディ材料の密度(比重)が小さいことがわかる。これがもたらす効果は、ウェイト配置の余地が大きく、軽い箇所と重い箇所にメリハリを付けることができ、軽快な動きや切れのある動きを作りやすいということ。また、強度に関して、木材は細胞壁が立体的に組み合わされた材料なので、空気を多く含んでいながら単位重量あたりの強度がプラスチックよりも高い。(プラスティック製のルアーはボディ比重を軽くするためには中空にする必要があるが、その代わりボディ強度が低下する。これを補うためにボディ内部にリブを入れたり部分的に厚みを増して対応しているが、それでもウッド製に比べると比重は高くなる。とはいえ、強度とアクションが両立できるよう緻密な計算の上、設計していると思われるから、単純にボディ比重が高いと、よくないかといえば、そうとも言い切れない。たとえ密度の高い材料であっても設計次第で優れたアクションを実現できると思われる。とはいえ、一個人がそのような緻密な設計をすることは難しいので、個人が自作する上で軽快な動きを目指すならボディを軽くするのが単純で簡単な方法だと思う。)
さらに改造が簡単なことも自作ルアーの良さと言える。例えば、後からボディに穴を開けてオモリを追加したり、減らしたり、ボディを削って形状をスリムにしたりといったことができる。これを市販品のプラスティック製でやると、ボディを削れば浸水したりして動きが大きく変わってしまうので難しい。
また、市販品では難しいこととして、ミスダイブしやすく、クセが強く、万人受けしない扱いにくいルアー。自作であれば、水面下を浅く泳ぐものとか、水面を飛び出しながらスラロームするものとか、ミスダイブはしやすいけど操作して楽しいものを作れる。
また、自作だと左右非対称になったり、天然素材である木材ならではのバラツキがあり、よくも悪くも動きが安定していないが、それがかえってランダムな動きにつながり、良い結果を招くこともあると思う。
操作して面白くないけどよく釣れるルアーと操作して楽しいルアーでは、どちらが釣りをして楽しいだろうか。ヒラマサを釣るには、どこで釣りをするかの場所(ポイント)が1番重要であり、そこではどんなルアーでも釣れる可能性は充分にある。同じポイントに別のルアーを同時に投げて検証することはできないのであくまでも推測になるが、魚を釣るには少なくとも、ルアーの種類よりも良いポイントを選ぶことの方がはるかに重要であることは間違いない。あとは、集中力を持続できて投げ続けられることであり、そのためには飽きにくく操作して楽しいことが大事な要素。だからこそ、ルアーというのは使って楽しいことが大切なことである。人それぞれ感性は異なるので、個々に好きなルアーは違うはず。そこで自分の好きなルアーを自分で作ることに意義がある。自作の意義とは自分が好きな動きのルアーを自分で作ることだと考える。
(入手困難なので、市販品といっていいのかわからないが、あるメーカーは、密度の小さい木材をボディ材料として、さらに中をくり抜いてボディ密度を低下させており、壊れやすいようだが、切れのある動きでよく釣れるとのことである。そうなると自作の意義とは、思いつく限りで挙げてみると「作る過程そのものを楽しむこと、自分の好きな動きを追及すること、試行錯誤(釣り場でウェイトを貼ったり浮力材を貼ったり)して動きの変化を楽しむこと、よく行く釣り場に特化した仕様にする、扱いにくいものを操る楽しさ、安価にウッドルアーを所持できる」これらが考えられる。)
続きは私がルアー作りの中で感じたこと気が付いたことを自由に書いていきます。
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